バーフバリ見た

 えーと「バーフバリ2 王の凱旋」ですね。

 結論から先にいいますと、めったくそおもしろかったです。

 もともとアクション映画ってどっちかっていうと疲れるから苦手だろってことで、食わず嫌いしてた部分あったんですけども、これは文句なしでした。どこからどう書いたもんかなあ……。

 とにかく全体の印象として「過剰」なんですよ。なにもかもが。まずインド人の顔面の濃さが過剰。それから画面の人口密度が過剰。怪力が過剰。決めてくる画面の構図が過剰。船のデザインが過剰。演技も過剰。とにかく作品の最初から最後まで徹頭徹尾過剰。インドって濃いのはインド人の顔面だけかと思ってましたが、そういうレベルの話じゃなかったです。ただ、この過剰さって、俺は詳しくないんですけど、たぶんインドの映画全般のものじゃないかと思うんです。この作品の場合、その過剰さを支える細部に隙がないのに驚きました。あの剣を引きずったときにしたたる血とかですね。そういう細かい部分に神経が通ったうえでの過剰なんですよ。細部もまあ、詰めすぎると過剰になるんですけども、その「すべてが過剰」のなかでちゃんと文脈が通ってるといいますか、要するに、この無駄ゴージャスな文化の洗練されたひとつの到達点みたいなイメージでした。いや、ほかのインド映画知らないからわかんないですけど。

 この「筋の通った過剰さ」みたいなものは、アクションシーンによく表現されてると思います。あんだけむちゃくちゃな格闘戦やってるんですけど、それが人間に実行可能かとか、物理的にどうとかいう視点をどこかに追いやって、お話のルールの内部で見る限り、すべてのアクションシーンがちゃんとつじつまあってるんですよね。まあいってしまえばマンガです。つくづく思ったのは、日本がアニメでむちゃくちゃってるあいだに、インドは実写でむちゃくちゃやってたんだなあということです。

 それとは別に感心したのがシナリオです。この映画の過剰さのひとつの要因として「全部が見せ場」っていう容赦のなさがあると思うんですが、シナリオでもそれはよく表現されていて、見せ場に集約していく流れが見事です。あの裁判のシーンなんかがいい例ですけども。もうみんな過剰に語るじゃないですか。どのキャラが引っ込んでるとかそういうことぜんぜんない。みんな主張する。みんな目立つ。その全員が過剰に目立ってるなかで、さらに過剰に目立つ主人公。濃すぎます。特濃です。しかもそれでいてちゃんと抜くところは抜いてくるのがすごい。人間関係を表現するための細かいエピソードとかもちゃんと用意してあるんですよね。

 あと音楽。俺が勝手に抱いていたインド映画のイメージとして「とにかく踊る」ってのがあったんですけど、その「とにかく踊る」のお国柄で育まれた映画であるせいなのかなんなのか、音楽の使いかたは抜群にうまかったです。「ここだ!」ってときにドンピシャで来るんですよ。それっぽい音楽が。過剰に。やかましく。

 画面とか構図の隙のなさについては、もう言うまでもないですね。例によってツイッターで実況しながら見てて、これレオンって映画を見たときにもやってたんですけど、あれもたいがいどこでどう一時停止しても「かっこ悪い」って見える場所がどこにもなくて、たいがい異常だろと思ってたんですけど、この映画はもっとやばいです。演じる人の顔から構図から、すべてが過剰に決まってる。全画面一枚絵。そのなかで、特に決めるべきシーンでは、もうなんでもかんでも一斉動員する。炎でもものが壊れるシーンでも水でも、とにかく「画面を盛り上げる」ためならどんな手でも使う。この容赦のない攻撃にも似た画面づくりの過剰さのテンションとアイディアが最後までまったく衰えずに持続するのはほんとうに驚異的です。

 お話として爽快感があり、かつスペクタクルという面でも問答無用で、それだけでもうおもしろいことは確定的なんですけど、なんていうんだろ「人間の想像力の限界を越えてきました」っていうすごいもの見せられた感が特にすごい。そう、ふつう「派手にやろう」と思っても、あそこまでバカげて派手なこと考えつかないんですよ、人間は。この映画のおもしろさというか、興奮の本質のひとつは、この「人間の想像力を越えた派手さ」にあるんじゃないかと思いました。そしてそれを実現するために動員されたあらゆる技術ですね。

 殺陣についてだけは、俺は時代劇見て育った人間ですんで、爽快感というか派手さみたいなのないなーと思ってたんですけど、あれそもそも思想が違いますね。要は人間どうしのアクションって「いかに強いか」を表現するためのものだと思うんですけども、端的にいうと、この映画ではそれは「怪力」によって表現されてる。時代劇だと速度感とかキレとか、あと超人的な技能じゃないですか。昨日見たマッドマックスとか、あとこのあいだテレビでやってたアクション映画見る限り、アメリカ(オーストラリア?)の映画では「肉体の強靭さ」みたいな感じ。

 ただまー思うのは、この映画を見て日本人がすげーと思うのは、ひとつは「あまりなじみのないインド文化そのもの」があると思うんですよね。カオスっぷりっつーか。だってオープニングから象が荒ぶってたら、もうそれだけで抵抗できないじゃないですか。あんだけ巨大なガネーシャ像とか出されたらもう無理ですよ。敗北するしかないです。

 

 まあそんなこんなでとにかくおもしろい映画でした。やー、やっぱ映画って娯楽の精華だけあって、とんでもないものがごろごろしてますなー。次はなに見るかなー。