ノゲノラ10巻

 どうにかこうにか最新刊まで読み終えました……買ってあったからね……まあなんとか読みましたよ。

 えーと、最初に言っておくと、この感想はわりと否定的なものになります。個人的な評価を抜きにすると、10巻の段階でも充分におもしろいです。単に俺個人とは致命的にあわなくなった、というだけですね。

 

 さて、10巻読み終えていちばん強く思ったのは、これそもそも小説ではない、ということです。7巻あたりからその傾向が顕著になってきたんですけど、おもしろいアニメをその場で活字化されてるような感じがありまして。あるいはマンガでもいいんだけど。キャラの初登場シーンや場面転換なんかで顕著なんですが、そのシーンが絵で表示されれば省略できる説明っていくらでもあるわけです。この作者はそれを逆手にとってか、あるいはクセなのかはわかんないですが、最初に説明されるべき場所だとか登場人物の描写だとか、そういうのをすっ飛ばして文章を始める。あとで必要な情報はちゃんと提示されるんですけども、これが驚異的にわかりづらい。

 キャラなんかも、小説ということで考えるとブレッブレに見えるんですが、映像になると、同じ内容であっても不思議なくらいに説得力がある。つまり「本来は」ブレてないんです。絵で見れば問題ないはずのそうした要素が、文章だと説明不足であるがゆえに、読んでるこっちが置いてきぼりにされるような感じ。

 全体として思うのは「ものすごく高度なひとりよがり」ということです。お話は、それはもうよくできてます。キャラも充分に魅力的です。

 でも、たとえば説明がもっと必要なところでしない。全体のお話のなかで重要とも思えないエピソードをえんえん引っ張る。一般的に受け入れがたいと思われるような一人称。ルビの多用。これらは金払って買う商業作品としてはまあひとりよがりといっていいような部分で、ただし個々の要素だけ見れば充分にレベルは高い。あ、文章力そのものだけはちょっとどうにもなんないですけど、それは別に。日本語として成立してるっていう最低限の条件さえ満たしてれば俺は気にしないほうなので。

 率直な印象としては「編集があんまり仕事してない」という感じです。

 ここから先は完全に憶測なんですが、そういう部分も含めて、なんていうか、既存の小説というものに対するアンチテーゼみたいな感じがちょっと窺えるんですよね。やりたいようにやるんだ、おもしろいと思う人間だけついてこい、というような。自覚的にこうしてる、というような雰囲気があるんですよ。それをいわれると(まあ憶測なんでいわれてはいないですが)ちょっとどうしようもない。10巻での巨乳談義の異常な引っ張り具合とか、シリアスなのかなんなのかわからん雰囲気も、あれは完全に意図的なものだと思う。問題は「なぜそうしたのか」がこっちに伝わってきづらいことなんですが。

 この傾向は、あきらかに7巻以降から強くなってます。6巻までは娯楽作品としては、減点法では5点、加点法だと190点とかそういうタイプの作品で、そういうものこそが圧倒的な、わけのわからないおもしろさを感じさせてくれるわけです。7巻以降では、加点法での点数は変化なく、減点法のほうが激しく低くなってるような感じ。トータルで見るとプラスにならない。

 

 あとはまあ、これはちょっと構造上どうしようもないことなんですけど、ハーレム構造になると、空と白の絶対的な結びつきみたいなのが薄味になってきちゃうんですよね。お話の規模も大きくなってきてますし。5巻までで見せたようなクソ精緻なゲームってそうそう作れないわけで、そもそもが白の比重ってどうしても低くなってしまう。でもそここそがこの作品の魅力のひとつで。

 閉じた関係ってのは魅力的なんですよ。しかし閉じた関係はお話を構成するのが難しい。特に娯楽の土俵となるとなおのことです。空と白は共犯者であり、共闘者でもあり、ゲームという一点においてこの陥穽を回避できていた。いままでラノベいろいろ読んできましたけど、この空と白の関係って、そのなかでも屈指の「美しい」ものだと思えたんですよね。でもそこだけに主軸を置いてしまうと、その後の展開がどうしても一本道になってしまう。このへんはどうしようもないんだろうなあ……。

 

 とにかく、俺のこの作品への評価は変わらず高いです。さんざん否定的なこと書いておいてなんですけど、このスケールの大きさ、6000年前と現在との照応関係、お話の緻密さ、どこをどうとってもめったにないレベルのおもしろい作品だと思ってます。なんでまあ、作者に置いてかれたってことなのかなあと。たぶんこれ、俺がいま十代だったらぜんぜん感想は変わってますからね。

 10巻のクライマックスは、あれはほんとうはめっちゃおもしろいものであったはずです。こっちにそれをおもしろいと思う回路がなくなったか、あるいは擦り切れてしまったかのどっちかでしょうね。