ボヘミアン・ラプソディ見てきた

 えーと、この感想はネタバレで参りますというか、クイーンがある程度好き(じゃない人はそもそも見に行かないと思うんだが)な方はですね、絶対「いかなるネタバレも」なしで見たほうがいい映画です。理由はこのあとの感想で説明しますが、俺は予備知識なかったおかげで、冒頭から一気にうわあああってなりましたんで。

 以下感想ですが、とにかく未見で見るつもりのある方は以下は読んじゃだめです。

 

 というわけで、感想に入る前に、自分のクイーンとの関わりについて書いとこうと思います。空行がわりです。

 リアルタイムで最初に聞いたのがたぶんアルバムのカインド・オブ・マジックです。最初はシングルがラジオから聞こえてくる程度の認識だったんですけども、当時はフレディ・マーキュリーのソロがノエビア化粧品かなんかのCMの影響かやたらかかってまして、まあ当時のこととて、というか現在もそうなんですが、俺は作り手の情報にはほとんど興味がない人間なので、クイーンの曲とソロの区別もついてない程度だったんですね。ただそうは言っても、この圧倒的な「声」の強烈さというのは届くわけです。すげえなと。なんだこの声はと。んでアルバムを買いまして。

 それがなれそめなわけですけど、じゃあそのあと集中して聞きこんだかというと別にそういうこともなくて、特に後期に関してはカインド・オブ・マジックとイニュエンドゥくらいしか聞いてないし、初期に関してもアルバム単位では「まあ聞いたことある」程度です。

 それがなんでこんな映画を見ることになったかというと、うちの奥さまがすんげーファンなんですよ。といってもうちの奥さま別に洋楽とか聞くわけじゃないし、そもそも音楽といったら「GLAYのすげえファン」という以外ほとんど聞かないってくらいで。それがあるとき、ライブ・エイドかなんかの映像見せてきて「これだれ」っていうんで「あークイーンのライブ・エイド映像だ。なつかしいなあ」って答えたんですけど、それからまもなくしてアマゾンで大量の買物がなされておって、気がついたら全アルバム揃えてた。それがせいぜい5年くらい前の話です。ただあの人もたいがい「聞く」以外の行動をしない人で、今回の映画のことすら知らなかった。

 そんでまー、話題だし、なんとか休みを重ねることもできたということで、今回見てきたわけです。

 じゃあ、以下感想です。くれぐれも見に行くつもりのある方は読まないように。

 

 

 なにより冒頭ですね。くっそ長くて音量がばかでかい予告編とかもう鬱陶しくてしょうがなくて耳ふさいでたんですけど、そのうち20世紀フォックスのロゴが出てきまして。最初はぼんやり聞いてたんですけど、すぐに「なにこの……シンセ? いや違うなこれギター……ええ、おい、これ、おいおい!」ってなった。すぐに「レッドスペシャル!」って声を殺して横にいるうちの奥さまに話しかけつつ、買ってあったバケツサイズのポップコーンを掴んだら床にぼろぼろと落ちました。

 もう、ああいう演出はたまんないですね。俺はギターに限らず、楽器ってものに対する感受性が非常に低い人間なんですけど、さすがにレッド・スペシャルだけは音が特殊すぎてわかるわけです。もう代名詞じゃないですか、クイーンの。

 ブライアン・メイといえば6ペンスコインなわけですけど、そういや以前に見たテレビかなんかでCharだったかな、6ペンスコインでギター弾いてて、なんじゃこりゃ弾けたもんじゃねえブライアン・メイおかしいだろみたいなこと言ってて、確かにあれは楽器なんかぜんぜん嗜まない俺でも「どう考えてもやりづらくね?」って思ってたんですけど、あのCharでもそうなら、本当にそうなんだなあとしみじみと納得したことがあります。

 そして映画全体の感想としては「うわあレッドスペシャルだあ」っていうのと「ブライアン・メイが本人すぎる」に尽きます。これ見た人全員思うよね。それで次にやることはライブ・エイドの映像を確認して再現度をチェックすることだと思うんですよ。うちの奥さまも映画見終わった瞬間「カメラのいる位置とかマイクをスタッフから受け取るタイミングまで同じだった気がする……」って言ってましたし。あとベプシの紙コップ。あれ映画見終わった瞬間「何個あったっけ?」って気になった人ものすごく多いんじゃないですか? 俺もタイムラインの人が紙コップの数を確認してたのを見てたんですけど、うちの奥さまもやっぱり気にしてました。

 で、俺も数時間前に帰宅して動画を確認してみたんですけど、おそるべき再現度ですね……。フレディ・マーキュリーがカメラに異常接近して歌うシーンなんかは、映画ではカメラのほうから映してたりするんですよね。つまりステージまるごとを物理的に再現して、映像を再構成してるような感じ。まあ、この映画を見に行くような人はとうぜんライブ・エイドの映像なんて暗記するくらい見てるでしょうから、それくらいやらなきゃ話にならないんでしょうけど。

 

 キャスティングについては、そもそもクイーンの現物でも、フレディ・マーキュリーとブライアン・メイしか個別認識してなかったので、ロジャー・テイラーとジョン・ディーコンに関しては似てるんだか似てないんだかわからなかったですが、とにかくブライアン・メイが本人すぎました。うちの奥さまいわく「わりとどこにでもいそうな顔じゃね?」というのも一面の真実だとは思うんですけど、それにしたって似てますわあれ……。

 主人公であるフレディ・マーキュリーについてはどうだろ。似てるって感じではなかったですけど、ふつうに演技に違和感なかったので、よかったんじゃないでしょうか。外人の演技なんてよくわかんないですけど。

 

 ストーリーその他については……どうなんだろうなあ……。

 ひとまずフレディ・マーキュリーがけっこうなダメ人間である、というような程度の予備知識はあったんですが、それを考えるとけっこう映画向きに作られてるのかなあとは思いました。伝記映画となると恋愛関係どうすんのかな、けっこう踏み込むとやべーんじゃねえかなとは思ったけど、それはまあ避けて通れない部分だろうから、ふつうにやってましたね。

 それと同時に思ったのが、わりと雑に挿入されてるフレディ・マーキュリーのゴシップ関連です。圧倒的な人気のわりにあんまり評判みたいなのよろしくない、というのがクイーンというバンドにつきまとうイメージなんですが、ああなるほどと。こっちは音楽しか聞いてないわけですし、仮にそれ以外の情報が入ってくるとしても、あくまで海の彼方のことなんで「そのときのメディアの空気」みたいなのはわからない。けど本国じゃそりゃでっけースキャンダルですよね。なるほどなあと思った。

 そういやこれで思い出したんですけど、カーペンターズってのもセールスのわりにあんまりよくないイメージあるなと思ってて、以前、外人さんと話す機会があったときに聞いたことあるんですけど、ゴシップのイメージけっこう強いらしいっすね。

 あーそうだ、あともうひとつ思ったのが、フレディのルーツとしてのパールシーであるということですね。俺なんかにとってはフレディ・マーキュリーっていっても要は「イギリスのほうの外人」でしかないわけで、ああやって家族の描写とか入れられると、想像以上にルーツとしてパールシーってものが近かったんだなあと思った。

 それで、決定的にやばいなあと思ったのは、メンバーへのエイズのカミングアウトのタイミングですね。あれ映画見てるときから「え、この段階で判明してたっけ?」って思って、家に帰ってから調べたんですけど、やっぱライブ・エイドの段階ではまだわかってなかったんじゃないかと思います。盛り上がり的にはあれでいいのかもしれないけど、どうなんだろうなあ……。

 そもそもこの映画の最大のコンテンツって曲そのものじゃないですか。見てる俺も、たとえばボヘミアン・ラプソディの録音に関するエピソードなんかはすっげー興奮したんですよ。あの化物じみた曲が「いままさにできる」っていう現場を疑似体験できるわけじゃないですか。フレディの恋愛沙汰とかわりとどうでもいいから、そういうとこもっと突っ込んでほしかったなあと思いました。自転車ベルみんなで鳴らしてるところとか。

 

 家に帰ってクイーンの曲を聞いてたんですけど、サントラがサブスクで解禁されてるみたいですね。タイムラインの人たちとああでもねえこうでもねえと言いながら聞いてて、ドント・ストップ・ミー・ナウの音が違うと。ふーんって思って聞き直してみたら、あれギターが挿入されてるのはもちろん、ソロも録音しなおしてるみたいだし、たぶんですけどドラムも新しくなってますね。スネアの音がぜんぜん違う。

 あと、ライブ・エイドの曲ですけど、映像なしで聞いたのはこのサントラが初めてなんですが、あらためて聞くとすげえっすね。演奏の隙のなさとか、4人でこの音出せんのかみたいな部分もそうなんですけど、やっぱりフレディの声。さすがに全盛期の高音は出ないにしても。

 仮にボーカルってのが単なる楽器ではないとするなら、音楽という形式を通じて人間の情動に届く能力が指標になると思うんです。もちろんそこでは楽器としての性能も重要なんですけど、それ以上に言語化できない「わけのわかんねえ部分」みたいなのがあって、その両者を兼ね備えているボーカリストというのは本当に少ない。いまさら俺が気張って言っても意味ないことではありますが、不世出のボーカリストというものが存在するとするなら、やっぱりフレディ・マーキュリーみたいな人のことを言うんだと思いました。